その日は、何だかやたらと眠気が主張する日だった。時刻はすでに夜、夜なんだから眠くて当然っちゃ当然なんだろうけど、いくら何でも程度が過ぎる。常日頃から身近な人間の無茶に付き合っているせいで寛容・許容の方向へのグラフの伸びが人より突出している俺でも、眠気くらいはもうちょっとコントロールしておきたい。(というのも、夜通しゲームをやる日だってあったのだから、俺の方が眠気より優位に立てた実績があるわけだ)
とにかく、そのくらいに眠い。理不尽さを訴える先もないまま、実際に船に乗って大海原へ漕ぎ出したとしてもこんなに眠くはないだろうという程に揺れている頭を何とか支えながら、珍しくもゲームなどではなく明日の小テストに備えて勉強などしていたのに、もう限界だ。むしろゲームの方が目が覚めたかもしれん(が、それでは枕ダイブを希望している頭を無理に起こしている意味がない)。今日は木曜日、だから、あとたった一日学校に行けば、イコール登山と下山を一回ずつこなせば休日になる。とはいえ、SOS団のしがない平団員にして雑用係の立場としては、世の学生がほとんど平等に与えられているはずの週休二日すら完備されていないので、日々の体力回復のための休息はぜひとも確保しておきたい。
そう、だから明日の英語の小テストは、残念だが諦めるしかない。
俺のクラスである一年五組を担当する真面目な英語教諭は、開示したテスト範囲すら勉強してこない生徒に対してたいそう厳しく、さらに俺には点数が悪いと物凄い勢いでどやしてくる涼宮ハルヒという名の鬼団長様まで居る。得体の知れない「SOS団」なる団体の頭領の威力がどれほどのものか、と、世の中をそれなりに渡ってきた人なら不思議に思うのだが、それが結構「それなりのもの」なのだ。彼女の機嫌が上々であれば呆れたような溜息交じりに、逆に悪ければ「馬鹿は滅びよ、アホは滅せよ!」と言わんばかりの態度。ちなみに補講は死刑を意味する。
平凡な日々を愛する俺としては、無用なごたごたは避けたいところだが、高校に入学してからこちら、俺は時折、平凡な日々に愛されてはいない。
中身があるような無いような、止め処ない思考がループしそうなのはやっぱり眠気に逆らえていないからで、俺は落ちていく瞼にストップをかけられない。ああ、夢の中でテスト勉強が出来たら、そうだな、出来るならば多分やってやる。きっと。やるんじゃないかな。おそらく。
だからもう今日は、
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と、瞬きをしたと思ったら朝になっていた。
つづく!