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場外乱闘

本日も場外乱闘です

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月曜なのに満身創痍です

具体的にどういう傷を負っているのかというと、定例会中にアホみたいに眠かったので(それは「何も萌えない」って自分で前置きしたフランス謙也を速水さんと大興奮で詰めすぎたせい)(まじであんなに萌えるなんて思わなかった)、自分の腕に爪を立てていたせい…そして眠らないために口の中を噛んでいたせい…ともに出血と皮膚損傷です。
もーお大変ですよ…会社の人には「自分、アホやな~」って関西弁で笑われてときめいたりして、まあ、大変ですがとても幸せです。(あーあ)
そうそう、新入社員が今日から来ました。
ボスははりきって「関西弁が公用語やからね!覚えてや!」と言ったのですが(どうやらこのネタをとても気に入ったらしい)、あろうことか新入社員君は「僕、出身は箕面です」って言った。えっ、うちの部署なんなの!?関西率異常じゃね!?と思ったけど、まあ、日本の三分の一は関西だよ。根拠となる数字はないけど、だいたいそんくらいだよきっと。だからうちの部署の半分が関西弁なのは、神様が私に萌えていいよ、そんかわりちゃんと仕事しろ、って言ってるんだと思っておく。

続きから、「将来同棲するであろう謙也と財前の学生の頃の話」です。
これ、ミニクーパーのと繋がってるな。というか特に言及せん限り、どれも繋がっている気がしてきた。
あと すっごい荒削りつーか下書き段階だけど、出力して校正したいけど、今そんなことやってる場合じゃないのでとりあえず吐き出す!いずれ本にしたいなーという気持ち!!!

[手紙、電話、そんなものより]


「うお、っとお」
期待しているようないないような気持ちのままポストを覗いたので、変な声が出た。誰も聞いてないといいな、と思いながらそろっと周囲を見回すも、帰宅中のサラリーマンの姿すらない夜、もちろん誰かが聞いているわけもなかった。当たり前のことに肩透かしを食らうというのも妙な話だが、そのくらい浮かれてしまうほどに謙也は浮かれていた。

手紙が来たのだ。

ここ半年の謙也の日課は、朝、家を出る前にポストを覗くこと、それから帰宅時にもポストを覗いて、家族が家に居れば郵便物を尋ねること。家族は何が目当てかすぐに気付いてしまい、最初の一週間で謙也が帰宅するなり「ないよ」と教えてくれるようになってしまった。まあ、無いほうが多いのだ。
たまに、そう、月に一度か、それより若干短いくらいに届く手紙は遠くイギリスから。住所の順番も謙也には慣れないぐちゃぐちゃな様子で、見たこともない切手も消印も落ち着かない。それでも中に入っている手紙が一緒に破けてはいけないと、珍しく鋏を使って封を開ける。
さすがに宛名はきちんと謙也の名前が書かれているものの、中の手紙は酷いものだ、小学校でも中学校でも手紙の書き方を習っているだろうに、そんなものはスッキリ無視をして、日記のような独り言のようなものが送られてくる。

『霧とかけっこう嫌いになってきた。
まじでうざい。
でもじゃがいもはうまい。
間違いをおかさないためには塩、これはガチです。
テストに出すで、覚えとき!
あと暑くても沼には飛び込まんこと。
あれは上級者向けやから。
知らん人にはついてかんこと。
相手が脱いだら逃げる。
自分が男にもてるとか死にたいわ実際。』

夜も十時を回って、死にたいのはこっちじゃボケ! と誰にともなく(相手は手紙の主なのだけども)ツッコミを入れて読む。九月も末なのにまだ気温は落ち着かずに夜でも指に汗が滲むので、手紙に染みてしまっている。嬉しいのと緊張と、とにかく一度目に読むときは感情がぐちゃぐちゃになったままなのだ。
二度目に目を通すと、思いついたまま書かれた文字は、眠たそうにのたくっているのに気付く。それでも書いてやろうというなら謙也にとって宝物にもなると思えた。
沼、沼に飛び込むのか、イギリス人。財前はストライクゾーンなんか、イギリス人……のホモ。
(ホモか……)
それに関しては、財前が男で謙也も男である以上、謙也もホモのカテゴリーに入らなければいけないのだろうけど、何となく気が引けた。ホモ、という大きな括りに飛び込むには勇気だの覚悟だのが足りてないように思う。謙也が必要としているのは、手紙の主、財前光だけなんだから。
というか、ダメだ、思考が「相手が脱いだら」から離れない。毎度のことながら状況説明を一切してくれない手紙だけど、その直後に続く愚痴からして脱いだ相手と言うのは恐らく男なんだろう。財前はついて行ってしまったのだろうか。
電話、電話と思ってパソコンを起動して、現在のロンドンの時間を確認する。財前が渡英してから謙也のパソコンのデスクトップに世界時計が置かれた、すぐには時差を計算できないからだ。
「お、昼か」
昼だというのは分かったが、さて電話をかけて怒られないものか。授業中にかけても出てもらえないだろうし、しかしメールをするより声が聞きたい。でも電話はリスクが高い、財前は時々、嫌がらせのように返事を全部英語でしてくることがある。
ああ、本当にどうして自分は出発の前日に喧嘩なんてしてしまったんだろう、と謙也は己の短気さを呪った。相手にぽんぽん文句を言えるのは、それだけ近い距離だからとしても、何も前日にすることはなかったのだ。
荷物もほとんど送った出発日前日、財前は謙也の部屋に泊まると言った。とても嬉しかったし、大歓迎もした。ただ、歓迎の仕方をいささか間違えたのだ。
明日空港へ車を出すのは謙也の役目で、財前はだらっと寝ていればいい。飛行機でも寝られるし、……そういう条件下の最後の夜、謙也はてっきり財前に触れていいのだとばかり思っていた。
だから忍足家で夕飯を食べ終えた後、部屋に連れ込んで当たり前みたいにキスをするのを財前が全力で(ここは誇張でなく、本当の全力だった)押し返したとき、謙也は怒りも落胆もしなかった。ひたすらに、驚いたのだ。
「……絶対、嫌ですよ」
「何で、半年も耐えなアカンのに!」
「はあ?耐えるの自分だけやと思うとんですか、あほんだらやな、ほんま。いや、ちゃうなあ、俺は別に耐えたりせえへんし。実際、謙也さんおらんでも自分の処理くらい自分でするし」
「お前、処理って、そんなん、俺が居んのに!」
「せやから、アンタが居らんっちゅー話をしとんのや、どアホ」
財前は視線で謙也を殺してやろうとでもいうような目をして、
「ま、謙也さんが遠距離ナントカに向かへんことくらい分かってるし。想定内っちゅーやつですわ。おやすみなさい」
と、テキパキ自分で客用布団を敷いて眠りについてしまった。
本気か……と謙也は唖然とする。
遠距離には違いない。大阪・イギリス間なんだからそりゃあ遠距離だ。でもそんなことより、遠距離ナントカ―財前の言わんとするところは「遠距離恋愛」だろう―に謙也が耐えられないと思われていることに唖然とする。
「財前」
「寝ました」
「したら寝ててええし、聞いてや。俺、たった半年くらい平気やで、何も問題ないって思てんねんけど、お前はちゃうん?」
「……」
「俺ら一緒におるようになって、もう四年やで、先輩後輩になってからは八年やで。今さら半年でどうこなるって、ほんまに思うんか」
なるべく責める口調にならないように、と気をつけた。財前がさっさと消灯してしまったせいで、表の外灯がカーテンの隙間から細く弱く入ってくるだけの暗い部屋、謙也はベッドの上で正座をしている。誰に見えるわけじゃないが、誠意の表れだ。
「半年経っても、俺、お前のこと好きなままやで、確実に」
何をもってして確実であるか、と例を提示すれば納得するのだろうか、と、一呼吸の間で考えを巡らせていたが、財前が寝返りを打ったのが分かったので口を閉じた。
「俺かて」
「うん」
「長めの旅行くらいの気持ちですわ。せやのに何べんも半年も半年も、て言われたら、謙也さん待てへん人やし、やっぱしアカンのかって思うでしょうが。……そんな、構えられても困るわ」
言葉を選んで紡ぐ、財前がそうやって喋るのを聞くのが好きだ。それがあるから、どんなに乱暴な言葉で文句を言われようと、好意を間違わない自信がある。だから本当は、出発前夜にしなくたって構わない。ただ、好きだから寂しいよと言いたいだけで。
予定は崩れに崩れて、どさくさ紛れに好きだと言い、しかもこの先だってずっとそうであると告白してしまった謙也は、財前の言葉で胸がじんと熱くなってうっかり満たされてしまった。
それ以上何も言わない財前に、「旅行先から手紙書いてな」と言って、眠りについた。それくらいでいいんだと財前が言うんだから、それくらいでいいんだろう。


それから財前は、不義理だと罵りたくなるギリギリのスパンで手紙を寄越す。財前からの手紙の返事はいつも電話してしまって、何だかちぐはぐではあるけど怒られはしなかった。
後から読み返せるだけ手紙の方が嬉しいだろうかと、ちらりと考えないでもなかったが、謙也の文字を財前は何度も「象形文字か」と言っていたので、読み返される材料になるのは恥ずかしい。それに、手紙が来て嬉しい気持ちは一刻も早く返したいのだ。
迷った挙句に携帯を手に取り、ベランダに出た。電話で返事をするときはいつもそうしている。財前の留学で、遠い異国の地だって空は繋がっている、と、謙也は生まれて初めてそんな気持ちになったからだ。
だが意を決してかけたというのに通話不可の音声案内が流れるだけだ。途端に不安にかられてメールに切り替える。
『今どこ?』
『家です』
家ってどこだ、ホームステイ先か。すぐに返事が返ってくることにひとまず安心はして、続けざまに返信メールを作る。
『何してん?電話通じんのやけど』
ひとまず、の安心しか得られず、じわりと謙也の体を浸す緊張のせいで嫌な汗が出る。事件じゃないだろうけど、一体何があるんだろう、と。
『何もしとらん。強いて挙げるなら謙也君からの電話待ち』
『かけたって。でもつながらん』
『お掛け間違えやないですかー?』
掛け間違えって何だ、番号が変わったなんて聞いていないし、と携帯に入力した番号を確認する。ずっと使っている携帯の番号と、海外用の変な桁数の番号。
やっぱり間違えてはいない、いないが、もしかしたら日本で使っている方で通じるようなサービスに変わったのかもしれない、と一か八かで掛けてみることにした。
ハロー、と語尾を上げる財前のかすれた声、向こうは昼だというのに何で眠そうなんだと思いつつ、安堵の気持ちのほうが易々と上回って声が上手く出せない。
「俺やけど」
と言うと、
「知り合いに俺さんなんて奴はおらんわー」
と返される。ベタな。
「けん、……忍足やけど」
「そんな風に呼んだことありませんよ、俺」
「……謙也です」
何で名乗るだけでこんな恥ずかしい気持ちになるんだ、と不貞腐れた声色で応えれば、財前の機嫌はとても良くなったようだった。
「これ、手紙の返事やんな?」
「おう」
「もう何書いたか忘れてもうたわ」
昼から酔っ払っているのかと思わせるような、何だかふわふわした声に、謙也はますます心配になる。機嫌が良いのは何よりだけど、財前は今、どうなっているんだろう。
「沼の話と、あと、ゲイに好かれるって話」
「ああ、そんなん書いた気ぃするわ」
暢気な返事、謙也の見上げる空も特に事件は起きずに星がぼんやり瞬くだけだ。良かった、いつも通りだ、と不安が徐々に引いていき、喉から出る声にもそれが反映されるようだった。
「ほんでお前、どないやねん」
「何が」
「ゲイに好かれるって」
「まあ、もう終わった話やし」
「緊張感ないなあ!」
「やって、もう帰ってきてるし」
え、と思った瞬間に、電話の向こうから笑い声が聞こえる。それに混じって「アホやなー」と言う女性の声、謙也も知っている財前の兄嫁の声だ。
「はああ?お前、ちょ、何で言わんねん!」
「向こう行く前から、帰りは兄貴が空港迎えに来てくれるって言うててん。まあええかなって」
「お前、そんなん、」
「ほんで、昼に謙也さんち寄ったけど居らんかったから」
聞いてない、財前からも聞いてないし、家族にも教えられてない。それでも、何かもっと文句を言いたくはあるのに、すぐそこに財前が居るんだと思うともう気持ちが逸ってしょうがなかった。
「~~お前、明日暇?」
「暇すよ」
「今から行ってもええ?」
「家族水入らずの財前家にすか」
しれっと答える財前が憎たらしい。財前の家族が財前をでろでろに可愛がっているのは知っているし(だからあんな傍若無人な末っ子になるんやろな、と白石が言っていた)(白石に言われてもな、と謙也は思っていたが黙っておいた)、謙也だって家族を優先させてやりたい、けど、家族はもう財前に会っているんだろう。空港に迎えにも行ったんだろう。
「……やって、顔、見たい」
搾り出した声がみっともなくたって、知らない、知るものか。
「写メ送ったりましょうか」
「足らんわ、アホ」
「ほんならムービーも付けたる」
相変わらず楽しそうな声、やっぱり酔っているのかもしれない。楽しそうな団欒を邪魔するのは気が引けるけど、謙也にだって少しくらい財前を分けて欲しい、楽しそうに笑う、ちょっと緩い雰囲気の財前なんてもう半年も見てないんだから。
「足らん、ぜんっぜん足らん」
「会って何するん」
愛を試されているんだろうか、と謙也は思った。試すというか、確かめるというか。それで財前が満足するなら何でも言ってやろうと思うのは、もう待ちきれないからだ。すぐそこに居るなら我慢したくない。
「会って、顔見て」
「うん」
ベランダから自室に慌しく入って一瞬迷って車にしようと決め、階段を転がるように降りる。リビングのキーケースから車の鍵を取るときに母親と弟が声を上げて笑っていたから、きっと財前のところへ行くんだとバレたんだろう。構うものか。
心臓が跳ねる、自分が動くことで会えるなら、どこまでも走っていけると思った中学生の頃と同じ気持ちで。
「声聞いて、それから」
「うん」
一分一秒も惜しいとはこのことだ。ハリウッド映画のように車に転がり込んでシートベルトの装着とキーを差し込むのとをほぼ同時に行う。
「お前が腰抜かすぐらいのちゅーしたるわ」
「ほーお、えらい自信やな」
実際にそれが出来るかどうかは重要じゃない。そういう気持ちであることが伝われば、それでいい。
「お前、家の前で待っとけ」
「嫌すわ」
「ワガママ言うなや」
「先輩こそ、車降りてや」
「はあ?」
さあ発進、というところでヘッドライトが照らしたのはアスファルトの道ではなく、人影。眩しさに不快に歪められた眉と、いたずらが成功して心底満足した口元の。
「財前!」
驚きすぎて電話を落とし、ああでも、そんなのもどうだっていい。
謙也が慌てて車から降りるのを、財前は笑いながら待っていた。一瞬道路に落ちた光はもうなく、網膜に焼きついたピカピカした白い影が財前を良く見ようとする謙也の邪魔をする。
大きくなったな、なんて言いたくなるような懐かしさでもない、会いたかった、なんてすぐ口をつくような間柄でもない。ただひたすらに抱きしめたいと思ったことだけは何も言わずとも伝わったようで、財前はゆっくりした動きで両手を僅かに広げた。
駆け出すスイッチが入る前に、その体にたどり着く。久しぶりに抱きしめた体、これは自分のものだと強く実感して、それからキスをしようと少し腕の力を緩めると、
「謙也さん、外、外」
声が笑ったままの財前が腕を突っ張って謙也の暴走を制止した。それで少しだけ理性を取り戻すも、少しだけしか戻らない。自分のテンションが上がりに上がっているのを自覚しながら謙也は「車、乗って」と体を開放した。
笑ったままの財前は大人しく助手席に乗って、
「も、全然変わらんなあ、ハタチやのに」
と茶化す。茶化す声に時間差がなくて、声はちゃんと直接謙也の鼓膜を震わせて、それがこんなに嬉しいだなんて。
「居らんなら我慢できるけど、しゃあないわ」
何だかまた拗ねたような口調になってしまって、同意もしてもらえないのは謙也の答えを知っていてのことなんだろうと見当が付くけども。信号待ちの間に財前を盗み見たが、財前は窓の外を眺めていて視線が合うこともない。
顔が見たいのに、と謙也は残念に思った。
「……ほんま、遠距離恋愛向きませんね、俺ら」
「おお……ん?俺ら、て」
どういう意味だ、と財前を見るが、やっぱり窓の外を見ている。
「……謙也さんからメールがきたとき」
その上、慌てていた謙也が冷房を付けなかったものだから、窓を全開にしていて声も聞きづらい。
「うん」
「兄貴に車出してって言うたんですけど、えらい酔っ払ってたから、代わりに姉ちゃんが出してくれてん」
「え、あ、あれ、車から話してたんか!」
「そおです」
謙也の心臓が重なる緊張でどくどく鳴っていたときに、財前も飛んでいきたい気持ちでいっぱいだったということだろうか。
嬉しい、幸せだ。幸せに胸が詰まる、コントロールが難しい。財前に関することで謙也にはどうしようもないことが沢山ありすぎて、短時間に処理するのが困難だ。
心理の表層へ浮き上がってくる、言葉にしたら何だかチープに思えるそれをどうやって財前に見せてやればいいんだろう、と考える。
「財前、なあ」
「何すかー」
財前の緩い返事も久々だ。もう何度もこのやる気のなさそうな返事を聞いてきたのに、久々に聞くとなんだか胸につまされる。
気持ちを伝える方法を考えたり、時に考えずに行動したり、そんな時間を共有するようになって四年。どうして慣れないままなんだと訝しく思うほどに、謙也の気持ちは財前に向いていて、その逆も同じように伝わってくる。
「あー、ええと、明日暇て言うてたよな、したら」
「ホテル行きますか」
「はああ!?」
「やって、車でやんのは狭いから好かんわ」
こいつは本当に財前か、と耳を疑うような言い様に、また横を向いて確認すると、今度はちゃんと目が合って、
「こっちは浦島太郎やねんからナビでけへんからな」
と笑われた。
出国前は何だか頑なに断られたような気がするのに、いいや、咎めまい、謙也にとっても素敵なお誘いに違いないのだから。
一番近いホテルは、と脳内ナビをフル活用してるのがおかしい。車で行くんだから近さよりは確実性を求めるべきなのに、待てない、待ちたくない、待たなくていいと言われたので。
「こう付き合い長いと」
「ん?」
「謙也さんのいらち、うつった気がするわ」
同じように気が急いているらしい財前は、言うなり、謙也の肩をぐい、と掴んで、むちゅ、と唇をくっつける。稚拙なキスなのに火がつくのはどうしようもない。
「……ちゅーか、自分、酒臭いわ」
「未成年やないし、普通に飲みますよ、そら」
そうだった、財前の誕生日から二ヶ月も経っている。
「ああ……明日、お祝いのモン買うたるわ」
家に戻れば、一応準備していたものがあるにはあるけど、戻るのも惜しい、それより一日中一緒に居る方がいいに決まってる。
「甲斐性、期待してまっせ」
気の抜けたいつもの声、だけどからかうような本当に期待しているような顔で言われては頷くより他はない。甲斐性、は、今夜のことも含めているんだろうけども。
結局、車内でキスなんか仕掛けてきた財前の方が待ちきれないでいるのを知ってしまったので、次に信号に引っかかったら自分からもさせてもらおう、と決めた。甲斐性のことはその後にでも考えよう。

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プロフィール

HN:
nafi/凪
自己紹介:
nafiは「なっふぃ」と読みますが、実際に会うときは「なぎ」って呼んで下さると返事をしやすいです私が。

カップリングの黄金率は「小器用で自分を作る人×長男気質」です。意固地な人とオープンマインドの人の組み合わせも、攻め受け問わず好きです。
オフラインは2010秋時点で謙財で、隙を見て古キョンとSOS団、あとは好きなものを書いていく所存です。
拍手のお返事は左上タブの「response」からどうぞ!

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