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場外乱闘

本日も場外乱闘です

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6/3 絵茶おわった

何故、こんな週のど真ん中で絵茶をやるのかって、そんなの私の勤め先が一斉退社日だからよ!
常に自分勝手!

けんざいMTG終了です!
まじもえた 本当にありがとうございました!!!!



そして下に、謙也さんが財前を気にする話

[今月のうお座]


同じ部活の気の合う後輩だと、だから他の奴に持っていかれたら寂しいのだとばかり思っていた。視線がばち、とぶつかる度に、「ああコイツは俺に懐いてんのやな」と思って嬉しくなってつい笑ってしまったりしていた。
それがどうだ。
部活の後、着替えながら「本屋行かな」と呟いたのを彼が拾い、「俺も」と言った、その一言で謙也は自分が予想外に喜んでいるのを知った。きっといつも、一緒に帰るときはこんな気持ちだったはずなのに、どうして今唐突に気付いてしまったんだろう。
俺も、と言った後輩は早く着替え終わった謙也が部室の外で待っているのを見て、「先行ったかと思いました」と淡々と言った。まさか、お前と一緒行くんが楽 しみやのに、とは言えなかった。きっと違うのだ、彼は謙也を親しい先輩として、気の合う仲間として慕っているのだから。
本屋までの道のりはそう遠くなく、また、本屋に行けば同じ学校の生徒の姿が見受けられた。ほっとするのと残念に思うのが入り混じって落ち着かない。
「先輩、この後用事でもあるんですか」
会計を済ませてから雑誌コーナーで謙也には全く興味が沸かないパソコン雑誌を見ていた後輩の側へ行くと、彼はうんざりしたような声で尋ねてきた。
「へ?」
用事。そんな話をしただろうか。
「落ち着かん……のはいつものことやけど、さっきから人の話聞いてへんし」
「え、俺、何聞いてへんかった?」
「何べんもするような話でもないすわ」
機嫌を損ねただろうかと心配するまでもなく、彼は実にあっさりと「終わったんやったら出ましょ」と雑誌を棚に戻す。
いつもと違うことに気付かれてしまうほど、自分は態度が違うらしい。心持が違う、というのは自分でも分かるけど、それがどう態度に出ているのかはよく分か らないのだ。生意気ばかりを言う彼が「おかしい」と言うのならそうだろう、こちらがヒヤリとするほどに歯に布着せぬ奴だから。
「ザ・上の空」
「俺?」
「あんたの他に誰がおんねん」
短い遣り取りの間にも、口の悪い後輩の態度はまったくいつも通りであり、謙也だけが彼の様子にそわそわしているのが分かる。上の空、ではない、今となりに居る後輩のことを考えているんだから、心は確かにここにあるのだ。
「先輩、あれやったで」
「どれ」
「金銭運が悪くて、恋愛運が最高やて、うお座」
彼がさっき見ていたパソコン雑誌だろうか。パソコン雑誌に星座占いを、それも恋愛運を書いてどんなニーズがあるんだろうか。
思ったことはそのまま顔に出ていたらしく、
「まあ、先輩に好きな人なんぞおらんの知っとりますけど」
と真顔で付け足されて、条件反射で反論してしまう。
「アホ、そんくらいおるわ」
「うっそ、先輩がぁ?あ、ほんで恋わずらいでボケっとしとったんですか?似合てへんちゅーか、信じられへんちゅーか、……先輩が?」
「ほんま言いたい放題やな、自分」
何の遠慮もなくぽんぽん発言されては、謙也が勢いだけで言ってしまったのもバレていそうだ、と思った。
「やって謙也さんでしょ」
「俺に好きな人おったらあかんのかい」
「いやー……想像つかんな、って。そういう話聞かんし」
相変わらずの淡々とした声、謙也の恋愛には興味はないが謙也の変化は気付く距離のように思えた。驚いた顔はすぐに仕舞われて皮肉な色だけ残す後輩の、何にこんなにも引き付けられているんだろう。
「まあ自分でもよう分からん」
「どんだけ鈍いねん」
だってこんなの初めてで、と白状するのは格好悪く、また、気まずい。
お前のことだよ、お前のことが気になって気になって、もしかしたらこれが世間で言う、
「あ……」
恋なのではないかと、気付いたのだ。
漏れた溜息のような声に対して言及は無かった。
恋かもしれない、自分はこの気難しいようで意外と素直な、分かりにくいようで意外と単純な、一つ下の後輩をそういう目で見ているのかもしれない。
自分たちのような部活帰りの学生で混み合う駅で、謙也は自信の無さを反映したような声音で話した。
「友情との境目が、よう分からん。近すぎるからやろなあ」
「……そーゆー話は、部長なんかとしたらええんとちゃいます」
「嫌や、あいつ絶対笑いよるもん」
「俺かて別段役に立たんと思いますけど」
少し棘のある言葉が意外だ。棘なのか、苦味なのか判然としなかったが、多少の違和感は自分の感じ方の変化なのかもしれないと流せてしまえる。
「相談ちゃうし」
「相談ちゃうかったら何ですか」
ホームで二人、特に気にしているわけでもないのにダイヤを眺めて次の電車が来る時間を確かめる。三分後でも五分後でも、どっちでも構わないのに、謙也にしてみれば何か他にすることが欲しかったのだ。自分の中途半端な恋愛話だけではもたない。
「……ええねん、お前は口悪いけどええ子やって知っとるし、俺んこともよう分かっとるし」
100%の本音をつい零すと、返事は無かった。
ああ、もっと茶化すような言葉の方が彼は返事をしやすかっただろうか、それとも「良い子」なんて言葉は相応しくなかったか、と、しなくても良い種類の反省を僅かにして、十センチ差の身長を見下ろす。
俯いた顔にかかる黒の髪、その隙間から皮膚が赤く染まっているのが見えた。ホームの蛍光灯が点滅していて、それが一層、いけないものを見てしまった気にさせる。
「……照れすぎやろ……」
「……あんたが恥ずかしいこと言いよるからやろが」
謙也の声も大概上ずっていたが、返ってきたものも同じように上ずっている。気まずいよりもっとふわふわした、謎の感情。
何か、意味のないようなことを間を置かずに言いたかったのに、言葉を探すのを忘れて赤くなった耳から頬にかけてを凝視してしまう。次第に混んできたホーム で黙りこくった二人の中学生男子は人目に可笑しいだろう、というところまではきちんと想像できるのに、対策は立てられず、ただひたすらに照れているらしい 後輩の頬を見つめるばかりだ。彼も俯いたまま、赤みが引くのを待っているようだ。
電車がホームに滑り込んできて、それでようやく奇妙な時間が解けた。ほっとするような、寂しいような、本屋にいたときと似たような気持ちになって謙也は後ろを振り返る。彼の頬はもう通常通りのフラットな印象に戻っていた。
「先輩」
電車のドアが開いて、降車する乗客の波のせいで前を向かざるを得ない。ちゃんと聞いたほうが良さそうな声だというのは分かるのに。
「友情との境目は」
「お、おお」
さっきの話の続きだと気付いたが片足はもう車内へ一歩踏み出している。電車の中でこの話は何だか照れるな、逃げ場もない、と思いながら完全に乗り込むと、
「そいつで抜けるかどうかやと思います」
ドアが閉まる、財前はホームに残っているのに。
「え」
間の抜けた自分の声を、近くにいた他の学校の女子生徒に笑われてしまった。いや、まあ、それはいいんだけど。いやよくないか、話の中身が中身だ、年中盛っ ていると思われるのは忍びない。忍びないが、まさか知らない人相手に言い訳するわけにもゆかずに謙也は急いで携帯を取り出してメールを打った。その間にも脳みそが茹で上がるような気分にさせられる、まさかそんな下ネタみたいな判別法を示されると思っていなかったのもある。キツイ言葉は謙也の柄にもない恋愛相談をからかったのかもしれないが、電車に乗らなかったところを見ると相手にも距離が必要だったのかもしれない。
顔を見られないような、そうだ、またさっきのように真っ赤になっているかもしれないのだ。
高揚した気分で打ったメールには当然文句を綴ったのだが、相手は生意気を具現化したような存在で、
『そっちが振ってきた話ですわ』
と返ってくる。直接彼の喉を震わせて出た言葉なら、また上擦ったものだったのかもしれないのに勿体無い。でも、それが本人にとって良いことなら仕方がないとも思わせる。だから謙也も、挑発上等とばかりに、
『言うとくけど、お前の話やからな!お前でぬけっちゅーんか』
と送ったら、今度は返事は来なかった。冗談だと思われたか、本気で気持ちが悪いと思われたか。彼なら冗談だと思ってくれるだろうと考えていたから返信がないことが恐ろしい。
いずれにせよ、メールにするような軽口じゃなかった、と謙也はすぐに反省して
『嘘、今のナシ』
と、何とも格好悪いメールを送る破目になった。
怒らせたのか、それともまた耳やら頬やらを赤くしているのか、謙也には分からない。けれど、じいっと見入ってしまったあの姿をまた見たいと思い、もしも彼が自分と同じような気持ちでいるのならと根拠のない想像もしてしまった。


「抜けるかどうかだ」と言われた夜、謙也は試してしまった自分を激しく後悔した。あの恥ずかしさに俯いた頬、謙也を煽ってくる言葉、だけど同じ電車には乗らなかった微かな羞恥心。あれを触っていいと言われたならと想像すると、放課後の数時間の情報量だけでいけてしまうのだ。
吐精のあと、申し訳ないと思うところまで辿り着くより先に、件の後輩からのメールがくる。正確には妄想真っ最中に来ていたのかもしれない、少しないくらいに夢中だったから着信時刻を確認しないと分からないけれども。
『俺で抜けたら教えてください』
緩まってしまった口の端、泣きたいような奇妙な気持ちに駆られて、謙也は携帯をベッドへ放った。心臓がどくどくいっていて、上手くものが考えられない。そ れでも良かったみたいな文面に見えるのに、これで「余裕で抜けました」と返信していよいよ気味悪がられたらと思うと気持ちが竦んでしまう。
期待させやがって、どっち付かずの言葉を投げて寄越すな。
(ああ、うお座の恋愛運が最高て、マジやろか)
これで外れたら雑誌社ごとつぶしてやる、と、出来もしない呪いをかけた。


彼もまた恋と友情の境目で迷子になっているのだとしたら、どうだろう?

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HN:
nafi/凪
自己紹介:
nafiは「なっふぃ」と読みますが、実際に会うときは「なぎ」って呼んで下さると返事をしやすいです私が。

カップリングの黄金率は「小器用で自分を作る人×長男気質」です。意固地な人とオープンマインドの人の組み合わせも、攻め受け問わず好きです。
オフラインは2010秋時点で謙財で、隙を見て古キョンとSOS団、あとは好きなものを書いていく所存です。
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