昨夜のことはあまり覚えていない。
銀がぐでんぐでんになった財前を負ぶって家まで来てくれたのはかろうじて記憶にあったが、ぐでんぐでん度合いで言えば謙也も似たようなものだ。
「財前、起きて、お前ガッコあるやろ」
隣で謙也の布団を抱き込むようにして眠っている彼を起こそうと揺すったが、うざったそうに眉をしかめるだけで起きる気配はない。
ガッコ、俺もあんねんけどぉー。
ちょっと困って笑って、笑って吐き出した息が、ああ酒臭い。昨夜の分かりやすい名残。
飲んだしなぁ、と言いながらさっさとベッドを降りて、財前の着替えを適当に選んだ。
何で銀はウチに連れて来たんやっけ。
覚えてない。
俺はちゃんと一人で先に帰って、そうそうガッコがあったから。
だから銀が電話してきて、財前連れてってええかって訊かれた。
状況分からんけどええよ、って答えた。それは覚えてる。
「財前、ほらー、起きや!」
布団を剥ぐと、動物のように唸る。早よ起き、と追加でもっかい。遅刻するで、とも付け加えた。
財前はぼっさぼさの頭で体を起こした。
おはようございます、と言ったんだと思う。掠れて聞こえなかった、ほとんど吐息のような挨拶。
ちょっと可愛い、と思った。
酒に飲まれて愚図った彼が、自分のところに来たがったなら、仲間がそれを許したなら、幸せなことだ。
おしまい